生産者STORY

 
岩井の胡麻油STORY
 
胡麻油の老舗として貫いてきた伝統製法
岩井の胡麻油株式会社 代表取締役社長 岩井徹太郎さんに聞く
 
お料理にほんの少し加えるだけで、グッとプロの味に近づけることのできる胡麻油。岩井の胡麻油株式会社は、創業から156年、胡麻油ひと筋に伝統の製法を貫きながら、ずば抜けた風味と香味で、多くのファンを魅了しています。
 
 
創業156年の老舗
 
創業156年の老舗
香り高くお料理にコクを産む油として人気の高い胡麻油は、古くから珍重されていました。時代をさかのぼること156年前。安政4年(1857年)に、千葉県の佐倉市で創業した、岩井の胡麻油株式会社も、老舗の胡麻油メーカーです。
「本当はもっと以前からやっていたようなのですが、史実として明確にわかったのが安政4年でして、創業156年ということになります」と、岩井の胡麻油株式会社の8代目、代表取締役社長の岩井徹太郎さん。
胡麻油の原料である胡麻はほぼ100%輸入。そこで1893年、開港をきっかけに、輸入の要点となる横浜に進出。その後同じ横浜で4度の移転を重ね、9年前から現在の横浜市神奈川区橋本町に工場を構えています。工場地帯の一角とはいえ、東京湾に面した工場からは、レインボーブリッジやみなとみらい、遠く水平線のかなたには房総半島が見えるなど、絶景が広がっていました。
 

 
胡麻100%で作る胡麻油
 
胡麻100%で作る胡麻油
小さな小さな胡麻。油を搾るのには、いったいどれくらいの量が必要なのでしょうか? 
「胡麻は約400粒で1gです。油分は全体の50%なので、胡麻油1gを絞るのに、800粒の胡麻が必要です。『岩井の純正胡麻油 金口』のうち、小さいボトルで140gですから、このボトル1本を作るのに、約11万2000粒の胡麻が使われていることになります」と、岩井の胡麻油株式会社の代表取締役社長、岩井徹太郎さん。
何とも途方もない数字です。胡麻はその油分の多さから生命力こそ強いものの、小さなさやに入った種子を取り出すには非常に手間がかかり、必要な農地の広さに比べて収量が見合わないことなどの理由から、胡麻油の原料となる胡麻は、現在ほぼ100%が輸入によるといいます。
「『開け、ゴマ!』というフレーズは聞いたことがありますよね? あれは『アリババと40人の盗賊』というアラビアンナイトの話しのなかで、宝が隠された扉を開けるために唱えられた呪文でした。昔は胡麻がお宝と同じほどに貴重だったのでしょうね。胡麻のさやがはじけて胡麻が出てくるというのを連想して、ああいうおまじないになったと言われているんですよ」
岩井の胡麻油株式会社ではこの貴重な胡麻を使い、創業以来一貫して、“胡麻を絞っただけの胡麻油”、つまり、一切の混ぜ物をしない胡麻油を、昔ながらの製法でつくり続けています。
 

 
栄養価の高い胡麻油
 
栄養価の高い胡麻油
植物油には、胡麻以外にも、菜種やベニバナ、オーリーブなどさまざまな種類がありますが、胡麻油は抗酸化作用がずば抜けて高い油です。
「動物性の油に比べて植物性の油が健康によいというのはご存じのことと思います。なかでも胡麻油は、菜種油、大豆油、サラダ油、ベニバナ油、オリーブオイルなどに比べて、圧倒的に酸化をしにくい油なのです。それは、胡麻に含まれる抗酸化物質・セサミンの働き。栄養価の高さはもちろん、天ぷらをしても繰り返し使えるという意味では、とても経済的な油なんですよ。抗酸化力があるので、古くにはミイラの防腐剤にも使われたという文献も残っているほとです」と、岩井の胡麻油株式会社の代表取締役社長、岩井徹太郎さんが教えてくださいました。
さらに胡麻にはカルシウムや鉄をはじめ、リン、マグネシウム、亜鉛などのミネラル分、ビタミン類も豊富に含まれており、サプリなどとしても注目を集めています。
 

 
156年間、貫いてきた伝統製法@
 
156年間、貫いてきた伝統製法@
植物油のなかで、胡麻油は唯一、焙煎をします。焙煎をすることによって、風味豊かな胡麻油を作る。味の決め手となる工程です。
「焙煎の時間の長さや、火力の強弱によって、“濃口”“薄口(金口)”の2種類の胡麻油を作っています」と、岩井の胡麻油株式会社、代表取締役社長の岩井徹太郎さん。
濃口は、中華や韓国料理などのしっかりした味のお料理に。そして、薄口がいわゆる家庭用の胡麻油。Germer Roadでも取り扱っている「岩井の胡麻油(金口)」は、中華などのお料理にはもちろん、天ぷら、冷やっこをはじめとする日本食や、スープ、ドレッシングなど、繊細なお料理とも相性抜群です。
「胡麻油メーカーのなかには、濃口だけをつくって、あとは別の精製した油を混ぜ、薄めることで薄口として売り出しているところも少なくありません。けれど、それをしてしまうと風味も香味も落ちてしまうんです。ですから当社では混ぜ物を一切することなく、焙煎の方法によって作り替えるということにこだわっています」
昔からの製法にこだわり、焙煎の加減で味を決めるには、熟練した職人の技が欠かせないと、岩井さんはいいます。
「原料の胡麻は、10ヶ国以上から仕入れています。当然、産地によって、また季節によっても、皮の厚さや油分、水分量がすべて異なります。こうした繊細な違いは、いくらコンピューターで管理しても、同じ具合に仕上がらないんですね。それを、人間の経験で煎り具合をチェックしながら作るというのが、当社の製法です」
 

 
156年間、貫いてきた伝統製法A
 
156年間、貫いてきた伝統製法A
焙煎の工程が終わるといよいよ、胡麻から油をとり出す作業に移ります。
「油の絞り方には大きくわけてふたつあります。原料に圧力をかけることで物理的に絞り出す『圧搾法』。溶剤などの化学薬品を使って原料から油を溶かし出す『抽出法』です。また、これらを掛け合わせ、圧搾法で絞ったあと、残ったカスに抽出法を用いて混ぜる『圧抽法』というのもありますが、当社では、『圧搾法』ひと筋。抽出した油というのは、どうしても風味香味が落ちてしまうんです。創業当時から圧搾法にこだわってきています」と、岩井の胡麻油株式会社の代表取締役社長、岩井徹太郎さん。
岩井の胡麻油株式会社の工場には、昔使っていた圧搾のための機械や写真が展示されていました。
「長木式、ラジェット式、玉締め式など、ギューギューと胡麻を押す機械はどんどん進化していますが、圧搾法という原理そのものは一切変えていません」
そのほかにも、和紙と綿布を使ったろ過の工程や、不純物と分離させるのに、2週間という時間をかけて不純物を沈殿させ、上澄みを使う静地法という工程にも、こだわり続けています。
「不純物と分離させるには、遠心分離機を使えばすぐ終わるのですが、やはりこれも、風味香味を損ねてしまうんですね。やはり、昔ながらの製法というのが、胡麻油がもっとも生きる製法なんです」
 

 
胡麻油と日本食の未来
 
胡麻油と日本食の未来
お料理にほんの少し使うだけで、芳醇なコクを生み出してくれる岩井の胡麻油株式会社の胡麻油。代表取締役の岩井徹太郎さんは、その魅力を海外にも発信していきたいと言います。
「もう50年ほど前からアメリカへは輸出していますが、今後は東南アジアやヨーロッパにも展開していきたいと考えています。アメリカやヨーロッパの方々にとって、胡麻油は未知の油。使っていただくと、皆さん一様に感動されるんですね。お土産として持って行っても大変喜ばれるんですよ。逆に、日本では天ぷらをご家庭で揚げることが少なくなっている。これだけ海外に注目されているのにもかかわらず、大変残念です」
日本人の日本食離れが進んでいくなかで、岩井の胡麻油株式会社がこれから進む道とは、どういったものなのでしょうか。
「老舗の天ぷら屋さんにしても、そば屋さんにしても、『ごま油は岩井じゃないとね』と言ってくださる方がいます。時代に流され、製法を変えていたら、156年は続けてこられなかったのではないかと思いますよ。私たちの進むべき道はひとつ。これまで守り続けてきた味、伝統を、これからも守り続ける、そこに尽きます」
同じ形を続けていくことで、日本にも海外にも、変わらぬおいしさを届ける。岩井の胡麻油株式会社の強い信念が伝わってきました。