生産者STORY

 
ユニオンソースSTORY
 
「絶対に無理」に挑み続けたソース
ユニオンソース株式会社 前代表取締役社長 井草貴さんに聞く
栃木県日光市。観光地として名高いこの地で、天然水が豊富に湧き出ることはご存じだろうか。その清冽な水と新鮮な生野菜、そして風味豊かな香辛料を惜しみなく使い、独自の製法によって最高級のソースをつくる会社がある。株式会社ユニオンソース。彼らが満を持してお届けするソースは、これまで味わったことのないフレッシュさとスパイシーさに溢れている。
 
立ちこめるソースの香り
 
立ちこめるソースの香り
敷地内に足を踏み入れると、独特の香りがした。甘く、酸っぱく、香ばしく、そしてスパイシーなこの香りは、私たちの食卓でおなじみのソースの香りである。
「私どもがつくっているソースは、ほかの会社さんのおソースとは製法から何から違うんですよ」笑顔でそう語るのは、この工場で製品をつくるユニオンソース株式会社の前代表取締役社長、井草貴さん。
そのソースを昭和24年から作り続けているユニオンソース。そもそもソースとは、一体何からつくられているかご存じだろうか。
「これがね、意外と知らない方が多いんですよ。社会科見学に来た小学生のなかには『醤油からできている』なんて言い出す、すばらしいお子さんもいたりしてね」と井草さんは笑う。
「簡単に言うと、野菜スープに味を付けたものがソースなんです。トマト、タマネギ、ニンニク、ミカン、ニンジン、セロリなどが入った野菜スープに、香辛料やお砂糖ですとか、お酢などで味を付けたものがソースです。それで食欲をそそって、食材をよりおいしく食べようというのが、もともとのおソースの役目でございます」

 
水、野菜、香辛料へのこだわり
 
水、野菜、香辛料へのこだわり
ユニオンソースがつくる製品には、大量生産を目的としたメーカーのソースにない、強いこだわりがある。
「まず私どものソースづくりに欠かせないのが、豊かできれいな水。男体山から流れる清冽な天然水でわが社の製品はつくられています。また、生野菜を使っているのも特長ですね。多くの製造メーカーさんではピューレ状など一次処理された野菜を使用していますが、私どもが使っているのは生野菜をそのまま工場に持って来てます」
そんなみずみずしい旨味を持つ生野菜が、ユニオンソースの製品が持つフレッシュな味わいの秘密だという。そして、その生野菜と一緒に釜で加熱され、エキスとして抽出されるのが香辛料。その香辛料にもこだわりがあると井草さんは言う。
「私どもは香辛料をホール、つまり原形のまま取り寄せ、この工場で挽いて使っているんです」
挽きたての香辛料と挽かれた香辛料だとそれほどに違うのだろうか。井草さんは実際に製品に使用している香辛料を原形のまま手にしつつ説明する。
「この、まだ挽かれていない香辛料を、ギューッと潰して香りを嗅いでみてください。強烈でしょう。香辛料のなかには精油という油があり、そのなかに香りや辛み成分が含まれているんです。油のなかの香りは、原形を壊す瞬間、つまり挽きたてが一番強く、壊してから時間が経てば経つほど損なわれていきます。だから、私どもは香辛料をホールで取り寄せ、ここで挽いているんです」

 
野菜と果肉の繊維で勝負
 
野菜と果肉の繊維で勝負
厳選された素材でつくられるユニオンソースの製品は、その製造過程にも強いこだわりが見受けられる。そのひとつがでんぷんを使わないソースづくり。現在、ユニオンソースのソースは、トンカツソース以外の製品にはでんぷんを一切入れずに作られている。
「とんかつ屋さんに行ったとき、粗挽きパン粉や生パン粉などのごつごつした衣のとんかつが出てきたことはありますよね。あれは職人さんがカラッと、サクッと揚げているわけです。そのとんかつにでん粉を使ったおソースをかけてしまうと、でんぷん特有の増粘作用、つまり水分を保持しようとする性質によって、衣の隙間が埋まってしまいます。つまり、せっかくサクサクに揚がったとんかつが、口に入ったときにはベチョッとなってしまうんです。私どものソースでは、そういったことが起きません。果肉と野菜の繊維が、衣のうえに薄衣のようにまとわり、余分なソースは下に落ちる。つまりこのサクサク感が残るところが、私どものおソースを使う最大の利点なんです」
しかし、そのようなソースをつくるには、その分コストもかかるという。
「でんぷんに頼らず、衣にまとわるだけの粘度を出すには、それだけ野菜と果肉の繊維質が必要になります。つまりでんぷんのかわりに野菜や果物をこれでもかっていうくらい入れなくちゃいけない。つまり、でんぷんを使った、大量生産のおソースとは、素材の濃さが全然違うんです」
「まあ、それだけうちのソースは値が張りますけれども」と言って、井草さんは笑う。
さらにユニオンソースはほかのメーカーと異なり、ソースの母液、つまりカルピスでいう原液をつくり、水で希釈して製造している。
「まず濃い母液を作り、それを薄めて製品をつくると、最初から製品の味に照準をあわせてつくるよりも味にブレが生じません。お客さまに安定した、いつものおいしさをお届けするため、私どもはそういった手法を取らせていただいております」

 
業界の常識をくつがえした生ソース
 
業界の常識をくつがえした生ソース
そんなこだわりを持つユニオンソースがお届けする製品のなかに、これまでの常識をくつがえす斬新なソースがある。それがGermer Roadでもおなじみの「生ソース」である。一体どこがほかのソースと違うのか。井草さんが説明をしてくれた。
「生ソースは、その名のとおり一切火を使わないおソースです。想像していただきたいのですが、たとえば野菜カレーを、火を使わずに作ることはできると思いますか? この質問を主婦の方にすると、みなさん「絶対に無理だ」と言います。カレーと同様、ソースも加熱しなければできないと考えられているものでした。ですが、私どもが編み出した製法ですと、火を通さずにソースをつくることができるんです」
つまり、「カレーは加熱しなければ作れない」という主婦の常識と同様、「ソースは加熱しなければ作れない」というのは業界の常識だった。長年破られることのなかったその常識を大胆にもくつがえしたのが、ユニオンソースが満を持してお届けする「生ソース」である。その製法は一体、と尋ねたところ、企業秘密と言われるかと思いきや、井草さんは躊躇なく口を開いた。
「まず、香辛料を1週間前にお酢に漬け込んでおきます。これによって香辛料は殺菌されるんですね。次に、生野菜を酵素に漬けて溶かします。そして、香辛料と野菜をブレンドし、調味するだけで完成です」
この生ソースは、火を使っていないからこそ実現した、フレッシュな味わいが魅力。香辛料の風味もパンチが利いている。「絶対に無理」と思われてきた製法に挑戦する。そのソースづくりに対する果敢な姿勢が、生ソースという唯一無二、新鮮でスパイシーな味わいのソースを生んだのだ。

 
シンプルながらも機能的な工場
 
シンプルながらも機能的な工場
業界のなかでも気鋭の存在であるユニオンソース。その工場のなかは、清潔で機能性の高いつくりがされている。まず、目に飛び込んできたのが、ソースづくりの要である野菜と香辛料のエキスをつくるためのふたつの圧力釜。タンクのような筒形の釜は、天井と側面にそれぞれ蓋がついている。
「この釜、大きいでしょう。まず、上の蓋から野菜と香辛料を入れます。この釜の真ん中には網のようなものがあるのですが、そこに乗った野菜たちをグラグラ煮込んで、野菜エキスを下に落とします。それがソースの母液の要となるエキスです」
ただね、と言って井草さんはおかしそうに続ける。
「先ほども申し上げましたが、いまつくっているのは原液、つまり濃いものです。だから、ここでできた野菜エキスはとっても苦いんです。舐めたら一生後悔するくらいにね。ちなみに、エキスが出来上がったときのにおいも、すごいんですよ。会社全体に漂って」
一生後悔するほどに苦いという母液をつくる釜は、ユニオンソースにしかないオリジナルのものだという。
「普通のステンレスタンクは、ステンレスの厚さが3、4ミリなんですけど、このタンクはすごく分厚くしています。ここにしかないものなので、壊れたら終わりなんですけど、なんせ頑丈なうえにシンプルですからね、そうそう壊れることはありません」
そうしてつくられたエキスは酢や砂糖などの調味料や果汁が加えられ、希釈し、充填される。ここで加えられるみかんとりんごは、おろし金ではなくクッカーという業務用の機械で切られる。
「これで切るとトロットロでおいしいんです。ちなみにみかんは皮まで砕いて入れています。なんでみかんをソースに入れるかというと、皮の渋みが、ソースのコクになるんですよね。すごくしっかりとした味になるので、みかんの皮は外せないんです」ユニオンソース製品独特の、深い味わいは、こういったこだわりから生まれている。

 
おいしさは安心があってこそ
 
おいしさは安心があってこそ
そうしてできあがったソースは、ホースを通って充填に回される。この工場では配管を通るのではなく、取り外しのできるサミタリーホースを通って運ばれる。
「もともとうちの工場は配管でつないでたんですけど、いまはこういったホースをパカッと取り外ししています。こちらのほうが衛生的だし、事故も防げるので、安心で安全なので」
工場を見学していて気付いたことがある。作業員ひとりひとりの腰に、リモコンのようなものがついているのである。
「あれはね、ナイフなんです。以前はみんなで共有のものを壁に掛けておいたんですけど、どこかに行ってしまうことがあって。食品を扱う以上それは危ないだろうということで、一人ひとつのナイフを持たせています。そうすることで腰にナイフがない者がいると周りが『おい、ナイフどこだ?』と声をかけ、大事をとってラインを止めることもできますので」
当然だが、おいしさは安全があってはじめて成り立つ。食品を扱う者の責任の重さが伝わってくるエピソードだ。

 
ソースと煮込み料理の出会い
 
ソースと煮込み料理の出会い
こだわりの素材を使い、斬新な製法で、新機軸を打ち出し続けるユニオンソース。それでもなお、日本人のソース離れを感じると井草さんは語る。
「ソースは、いまとなっては揚げ物にかけるイメージが強いかと思いますが、もともとは調味液なんです。だから昔の人で、カレーにソースかけてた人、いましたよね。あの使い方が正解なんです」
さらに井草さんは、常識にとらわれない、意外なレシピを教えてくれた。
「豚の角煮と魚の煮付け。この味付けにソースがいいんですよ。そもそも煮付けって、みりんにお醤油、砂糖を入れて味付けしていますよね。ソースにはお酢も入ってるし、砂糖も入ってるし、野菜エキスも入ってるし、香辛料も入ってる。つまり、旨味がギュッと詰まっているので、煮付けにするにはソースが一番合ってますね。本当ですよ」
魚の煮付けのつくり方は、ウスターソース1:水1でつくった調味液の中に魚を入れ、30分から1時間ほど漬け込む。その後はそのまま火にかけるとできあがる。豚の角煮は、ブロック肉を切らずにそのまま、フライパンで6面焼き付ける。焦げ目がついたら肉を、水から一度煮る。しばらくしたら煮汁をすべて捨て、ソース1:水2でつくった調味液でじっくり煮込めばできあがりだ。
ソースのスパイシーさがほんのり残りつつも、角が取れた、意外なほど甘く優しい味わいの煮込み料理ができあがる。新しいソースを提案し続ける彼らの、ソースという概念をくつがえすレシピ。ぜひ、ユニオンソースこだわりの生ソースでお試しいただきたい。